助手席にがっくりと座り込んでいた。 今日もまたいつものように攫われて撩に助け出された帰り道。 今度こそはと思いながらも、その今度も同じ目に遭う それの繰り返し。 その度ごとに撩も多勢に無勢の中に飛び込まざるを得なくなる。 いつものようにかすり傷一つ負わずに 奴らを完膚なきまでに叩き潰したからよかったものの、 相手がそんな雑魚ばかりだとは限らない。 いつ撩ですら歯が立たないような強敵の手に陥ちるかもしれない。 そうなったら――あたしのせいだ、 撩にもしものことがあったら。
――あたしは撩の足を引っ張ってばかりだ。 パートナーとして力になるどころか 危険にばかり曝している。 撩のそばにいる資格なんてあたしには無い。 いない方が彼のためなのだから――
「――おり、香!」
運転席から激しい声が飛んだ。
「左を見ろって言っただろうが」
クーパーが止まっているのは見通しの悪いT字路。 信号も無いここでは目視で車の往来を確かめなければならない。
「何ぼんやり助手席に座ってるんだ。 そこに座ってるなら左側を見るのがお前の役目だろ。 そうすりゃ半分の時間で曲がれるんだから」
そうだ、あたしには果たさなきゃならない役目がある たとえそれが、たかだか左側から来る車の確認だとしても。 それを果たすことで、少しでも撩の役に立てるのなら。
「左オーライ」 「ラジャ、右オーライ」
と言うと撩はアパートへとウィンカーを出した。
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