突発的妄想小説:THE IDOL M@STER SP
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吉野夕。22歳に765プロへ入社。 吉野財閥の一人娘であり、この765プロへの就職は夕に後を継がせるための武者修行の形で、夕が父に懇願し、 それが認められて入社の流れになった。 最初は、後に同じチームとなる有川の付き添いとして、研修を行い、その3ヶ月後、チームに入り初めてのプロデュース活動を行うことになった。 その最初のアイドルが、同じく入ってきたばかりの星井美希だった。 「お互い、初めて同士よろしくね」 「うん。よろしくなのー」 それが、二人のプロデュース活動の始まりであった…が、プロデュース活動は夕が想像したものより、過酷なものだった。極めてマイペースな美希、新人で右も左すらわからない夕。レッスンは美希のごまかしが度々あり、ノーマルレッスンどまり。 営業活動も新人の夕には大した仕事も入ってこず、また、美希のマイペースが影響してトラブルもしょっちゅう起こっていた。 しかし、美希の気の抜けた、やる気の無い行動に夕は怒ることも無く、懸命にレッスンを進め、営業活動を続け……その努力が実り、7ヶ月目でアイドルランクCにアップした。
「夕プロデューサーさん、おめでとう!ランクアップですよ!」 テレビ撮影が終わって事務所に戻ってきた二人を、ランクアップ通知を持った小鳥が駆け寄ってくる。 「えっ…本当ですか!?」 「はい♪今日7時の時点でファン人数規定クリアです!」 小鳥の言葉を聞いて、二人は呆然と立ち尽くす。半秒たってから夕は隣に立っていた美希に抱きついた。 「うわっ!」 「やったね、美希ちゃん!これでアイドルの仲間入りだよ!」 「ぷ、プロデューサー…苦しいの…」 嬉しさのあまり、夕は美希の体をぎゅっと抱きしめる。美希は少し苦しそうだったが…いやではなかった。
その帰り道、美希と夕は電車の中にいた。今日は特別に、と夕は美希を家まで送ることにした。二人以外にその車両に乗客はなく、規則的な音だけが聞こえてくる。 うつらうつらと舟をこいでいる夕を、美希はじっと見ていた。ここ最近は夕は美希を売り込むために休みもとらずに営業活動を続けていた。もちろん、それを美希も知っている。 「…ューサーさん?」 「えっ!?」 はっとした夕は思わず身を起き上がろうとして、反射的に起き上がろうとして、あたりを首で軽く見回す。すぐそばにいた美希を見つけた夕は、ほっとして、ゆっくりと座る。 「ああ、ごめんね、美希。ちょっと寝てたみたいね」 夕はそういって、少し腕を伸ばした。しばらくまた規則的な音が続き、夕が再び舟をこぐ前に美希は夕にひとつの疑問を投げかけた。 「ねえ、プロデューサー…どうしてそこまで美希のことで頑張ってるの?」 「え?」 美希の疑問に夕は隣にいる美希の方を向く。 「だって、他人じゃない。自分の事じゃないのに、どうしてなのかな、って。美希には分からないの」 真剣なまなざしで言う美希に、夕はああ…と納得して、ゆっくりと背もたれに身を寄せる。夕は視線を天井に向けた。 「私ね、子供の頃アイドルになりたいって夢を持ってたの。でも、持っていただけでそれを実行することはしなかったし…多分、できなかった。765プロに入ったのは自分が出来なかったその夢を、同じ夢を持っている子へかなえてあげたいと思ったから…かな」 美希は黙って夕の顔を見る。その顔は美希には輝いて見えていた。 「最初はね、765プロに入ったとき…それを自分ひとりでやってみようと思ってたの。今まで、自分でやってみた事ってそれほどなかったし、打ち込めなかったから…でも違うと判った。有川さんや茂木原さん、夜原さん達や小鳥さんやアイドルのみんなに助けてもらって…やっとやっていけるんだって…特に、美希の助けがほとんどだったけれどね」 「美希…が?」 目を丸くして美希は言う。夕は笑って答えた。 「ええ」 その言葉に美希は夕から視線をそらして、窓の外を見る。夕も同じように流れる光の景色を眺めた。 「そう…なのかな」 「そう…なのよ」 再び、規則的な音だけしか聞こえてこなくなったがしばらくして、美希の直ぐ近くからそれとは違う音が聞こえてきた。夕の寝息である。 「そんなに頑張らなくてもいいのに…。美希、その分頑張るから」
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Date: 2008/08/08(金)
No.648
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