もっこすです。 博多座で中村鴈治郎(人間国宝)の坂田藤十郎襲名披露公演を見てきました。 坂田藤十郎は、長い間途絶えていた上方歌舞伎の大名跡で、初代は菊池寛が小説『藤十郎の恋』(青空文庫で読めます)に描いたほどの名人でした。それを去年、家の違う鴈治郎が継いだのです。 この日はおばちゃんたちに紛れて夜の部を見てきました。
「鶴亀」 「毛抜」 「大津絵道成寺」 「与話情浮名横櫛」
「鶴亀」は中村富十郎(人間国宝)が皇帝で、藤十郎の息子二人が鶴と亀という、めでたいものでした。内容は能と同じです。ちゃんと<楽>の囃子もあります。長唄舞踊なので能の重々しさはなく、華やかでした。
「毛抜」は歌舞伎十八番の一つというだけあって、内容そのものが面白いです。主役の市川左團次は、見得の型が格好よかったです。でもそれより気になったのは、後ろに控えていた腰元役の役者たちで、しおらしいのからおかまみたいのまで様々でした(笑)
「大津絵道成寺」は夜のメインディッシュで、夜では藤十郎が出演する唯一の番組です。劇の途中で襲名の口上をするという、粋な演出もありました。内容はというと、道成寺と銘打ってはいるものの、能の道成寺とは趣が全く違っていて、主眼はむしろ大津絵にあります。大津絵に描かれている人物が絵から飛び出して踊るというものなんですが、藤十郎は五変化といって、五人の人物を踊り分けます。芸の幅の見せ所ですね。でもここでも気になったのは主役じゃなくて、今度は囃子方でした。小鼓の一番偉そうな方の技術と音が素晴しかったです(後でこの方は望月朴清という人間国宝だということがわかりました。どうりで)。あと太鼓の方の姿勢がきれいでした。ちなみに<頭>の打ち方は観世流でした。
「与話情浮名横櫛」は前から見たかった演目なんですが、始まる時点で開演から3時間半くらい経っていたので集中力が切れてました。途中から頭の中では「早く帰りたい」と何度もつぶやく始末。なのであんまり印象に残っていません。
帰りに出口で櫛田神社の豆まきの豆を配ってたのでもらって帰りました。ラッキー。この公演は26日が千秋楽です。気が向いたら今度は一幕見でまた見に行こうと思います。
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