フィリッパ・ピアス=著 猪熊葉子=訳 / 冨山房
面白いけれど、不思議。 読み終えた後に胸に不思議なカンジが残る作品です。
イギリスの田舎町で暮らしている、ごく平凡な子供たちの日常生活を淡々と書き綴った物語。 抑制の効いた文章の中に垣間見られる、激しく静かな喜怒哀楽。 私達の生きている人生そのものが、物語のようなものであるような気がします。
本書に収められた作品のうち、「よごれディック」は宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を彷彿とさせられました。 特に気に入ったのは、子供の複雑な感情を描いた「川のおくりもの」。耳の不自由なジム爺さんと、口数の少ない孫息子のジムの静かで心温まる交流を描いた「ふたりのジム」です。 抑え気味の文章の中に人間のいろいろ複雑な感情が見事に表現されていると思います。
作品に込められたメッセージを読み解くのも良し、ただ、物語として楽しむのも良し、それぞれお好みの読み方で楽しむのも面白いかと思います。
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Date: 2005/05/07(土)
No.7
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