モーリス・ドリュオン=著 安東次男=訳 / 岩波書店
ミルポワルという名の町にある、ピカピカの家に住み、美しくて裕福な両親と一緒に何不自由ない暮らしを送る「チト」という名の男の子。 チトには他の人にはない、特別な才能がありました。 指で触れるだけで、どんなところにでも植物を生やすことができる、「みどりのおやゆび」を持っていたのです。 チトは「みどりのおやゆび」を使って、いろいろな場所に植物を生やしていきます。 刑務所、貧民街、病院・・・、美しい花を見て、たくさんの人達が幸せになっていきます。 そんな時、バジー国とバタン国との間に戦争が起きてしまいます。 そして、両国に戦争の武器を売っているのは、チトのお父さんの工場だったのです。 このことを知ったチトは、「みどりのおやゆび」で戦争を止めさせようとしますが・・・。
綺麗な話です。キラキラした夢の世界のお話といったカンジがします。 その分ちょっと現実味が少ないかもしれません。 戦争反対物語というよりは、「清い心・美しい心でいましょう」といった道徳的な物語な気がします。 訳者の安東氏は巻末の「訳者のことば」で、「フランスの童話には、ひとつの特徴があります。お話の、筋よりもきめの細かさ、詩的な雰囲気や言葉の面白さを、大切にすることです。そして、それらをうまく使って、まるで宝石のような、美しい文章をつくり出すのです。(中略)人間は、何から何まで詩につつまれて生活することはできませんし、またそんな純粋な世界ばかりで生きていたら、とても生きてはゆけないでしょう。(中略)しかし、本当に勇気をもって生きてゆくためには、詩が必要なこともまた確かです。それと同じように、子供たちが読む本が、全部「星の王子さま」や「みどりのゆび」のようなお話ばかりでは、少しばかりお行儀が良くなりすぎて困る、と私は思いますが、一方、わんぱくな子供たちの冒険がいっぱいでてくるお話に、みなさんが胸を躍らせるかたわら、とても詩的な童話を読むことも、ぜひ必要なことだと私は思うのです。」と書かれています。 私が読みながら「キレイすぎるな」と感じたモヤモヤを、この上なく見事に言葉で表現してくださいました。 そう、そうなんですよ。まさに詩的なんですよ。 でも、時には現実味の少ない詩的な要素も人生には不可欠なんですね。
言葉のプロでもある安東氏にこんなことを言うのも何ですが、自分の感じた気持ちを上手く言葉で表現できるって素晴らしいことだなぁと思いました。 私ももっと、自分の中にあるいろんな気持ちを言葉で伝えられたらいいな。
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